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しかし、顔を真っ赤に酸欠になりそうなほどがんばっても、そう簡単に音は出ず、ここからがまたチャレンジ。宇々地氏は、「フーッという風の音が土笛の中に聞こえたらそれも大切な音なのですよ」と言うと、今まで音を出そう出そうとして力む子供たちの肩の力を抜けたのか、その途端あちこちから美しい土笛のさまざまな音色が聞こえ始めた。音がまだ出ない子供も、その土笛を宇々地氏が吹くときれいな音が出ることを知り、一生懸命唇の形や土笛の角度を変えながら練習しはじめた。
「宇々地先生、宇々地先生」とあちこちから子供たちの声、それに答えて宇々地氏はあちこちに飛びまわって、一人一人の子供たちに教えていた。また音が出せた子供が周りを手助けしたりしながら、何とか皆、音が出るようになり始めた。初めて音が出たときの自信に輝く子供の顔の美しさはとても印象的であった。
その一瞬の達成感はきっと大人になっても心の中に宝物として残るのではないかと思う。自然の中で、大地にじかに座り、自分の手で土をこねて世界に一つしかない楽器を造り、それを演奏する…。
今の世の中で失われつつある、とても大切なことが、そこにはあるような気がした。
8月6日のキャンプファイヤーで子供たちと演奏するため、宇々地氏は、これらの土笛を自身のスタジオに持ち帰り、素焼きをし、当日また戻って野焼きをすることになっている。子供たちは、どこにも売っていない、自分の手によって作られた土笛の完成を心待ちにしていた。
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